歯科衛生士部門
「歯科衛生士というオシゴトの20年後」
夏冬会発起人
歯科衛生士コンサルタント 濵田真理子
【歯科衛生士のお仕事】
歯科衛生士は、歯科予防処置、歯科診療補助、歯科保健指導の3 つの業務を専門的に行います。歯科衛生士は高等学校を卒業後、歯科衛生士養成機関を卒業することで国家試験の受験資格が得られ合格したのち歯科衛生士として活動できるようになります。
【20年以上前】
1994年に起業した頃、厚労省の調査で歯科衛生士の平均活動年齢は27歳と言われていました。「患者さんの健康寿命と口腔内の健康寿命を1日でも近づける手伝いをしたい」「歯科衛生士の勤続年数をのばしたい」そんな色々な夢を抱いて起業しました。
【今】
しかし今では、私の教え子に72歳の歯科衛生士がいます。80歳で28本歯がある患者さん。メインテナンスに毎月来院する90歳以上の患者さんもいます。
そんな時代になりました。
【日本の歯科衛生士の免許・資格】
一生もので日本中どこでもいつまでも使えます。全国各地で私のたくさんの教え子も、出産2か月前迄働き、半年で復帰など…復帰率は約7 割を超えました。子育てを終えて50歳以上で復帰する人も以前より増えました。しかし…歯科衛生士不足は全国各地で解消されません。背景には、色々な理由もありますが…しかし、私たちが意識しておくべき事項の中にこの20年以内に歯科衛生士の分野にも人工知能やロボットが入ってくるということです。
【20年この先】
AIと歯科衛生士の関係が浮上するでしょう。既に施術はうまいけれど態度が悪い・説明が下手な事を改善しない歯科衛生士の代わりに…治療内容を説明するPepper
ロボットや動画で説明が代用されています。以前は、手用スケーラーがメインだった歯科衛生士分野も、今は超音波スケーラーや、エアフローなど色々なことが進化しています。実際は歯科衛生士の施術や歯磨き指導は器用さや柔軟性を求められるため、結果的には個々に合った対応という部分では、人工知能の苦手とする器用さや個々にきめ細やかな対応などは、やはり生身の歯科衛生士しか出来ないはずです。診査分野では歯科衛生士の仕事も人工知能で診断や治療計画、それを歯科医師が確認し、歯科衛生士がそのプランに対して実践するかもしれません。
【歯科衛生士と少子高齢化】
美容・サプリ・アロマ・エステ・漢方・ネイル・針・マッサージ…これは全て全国各地の某歯科医院で患者さんに提供されているメニューです。しかも地元の患者さんにとても喜ばれています。デンタルエステ・ホワイトニング…2025年には団魂世代が75歳以上の『後期高齢者』になるため、高齢者医療や介護の問題がより深刻化されます。その時代には、さらに歯科衛生士の仕事も充実し、疾患を持たなくても年齢を重ねるごとに機能低下などの口腔に関するトラブルに見舞われやすくなるだけでなく、いくつになっても健康で綺麗でいることを意識する生活者を応援する歯科衛生士の需要はさらに高まります。
【歯科衛生士の活動の場】
現在、医療分野はどこも治療よりも予防医療が進んでいます。歯科衛生士の活躍の場は広がると考えられます。数は少ないものの、大学・医科・企業など「どこで働くのか?」「どんな形で働くのか?」「何をするのか?」のように活動の場は多様化しています。歯科衛生士歴が長くなればなるほど…生き残れる人は、転職先でどんな歯科医師に好条件で雇ってもらえるか?という生き方ではなく、どの歯科医院でも与えられたところで極めて高い結果を出せる人です。目の前の患者を救える人・治せる人。AIが出来ないことを極めて高いレベルで実践できる人だと…思っています。
【まとめ】
女性の場合は、卒業して20年もあれば、結婚し・妊娠し、子育てもひと段落したのに親の介護がはじまるなど、色々なイベントが盛りだくさんです。しかし、どんな私生活を持っていたとしても、創意工夫をして歯科衛生士道を歩み続けることができたら、どんな経験も現場で活かされます。結婚前には、式に向けてホワイトニングを学び最高の笑顔で参加する・妊娠期に経験する様々な口腔の感触を大切にして現場復帰の際は妊娠をしている患者さんに役立てる・子育て中には、子どもの姿勢・咬合・呼吸・歯並びなど色々なものを目の前で観察し現場に出たら役立てる・介護の経験をしているのであれば体位やケア方法などをしっかり学び訪問診療の現場で役立てる。男性であれば、男性ならではの口腔の悩みや更年期の際の対策でも活躍する。歯科業界は…希望で溢れています。歯科衛生士という職業がますます評価が高くなるのか?評価が低くなるのか?今は大事な時期だと感じています。
自分は20年後…どんな歯科衛生士としてこの世で活動しているか?いたいのか?
良い評価を得るのも、残念な職業になるのも、20 年先の評価をつくるのは一人ひとり…そう【あなた】です。
※次回の講演は、AI にアロマ。どちらも20 年先の+ の変化のために価値あるテーマですね。
歯科技工部門
「混迷するいわゆる保険歯科技工料金の行方」
夏冬会発起人
歯科技工士 伊集院正俊
歯科技工の仕事をしているお陰で、日本や海外を問わず多くの友人に恵まれているが、日本の仲間には今一つ元気が感じられない。
日本は世界に冠たる国民皆保険があり、日本人の平均寿命は世界トップクラスを維持し続けている。
この保険制度と微妙な位置関係におかれているのが日本の歯科技工士といえる。日本の歯科技工士の仕事は、8割前後がこの保険の仕事で占められていると言われ、保険制度下での仕事が順調にいっていれば、日本の歯科医療界はもう少し良好に推移していけると思うのは小生だけだろうか。
現在の歯科技工所の技工料金は原則自由価格だ。価格は個々に歯科技工所と歯科診療所で交渉して決めていく。歯科技工所は特長を生かし、良好な料金を獲得していく努力は何より必要とされる。
昭和63年5月の厚生省告示により、歯科技工士会は歯科医師会に対し保険点数の製作技工料のうち、おおむね7割を払ってくださいと言う運動を続けている。
この真摯な運動に対し異を唱えるのは憚れるし、技工士会の今までの血のにじむようなご努力には頭が下がる思いである。
しかし、この30年余成果が上がっているとは言い難いのも事実である。
現在、保険診療費全体の中で歯科の占める割合は6、7%にまで落ち込んでいる。
仮に歯科技工士会が主張するように製作技工料のおおむね7割を日本中の歯科診療所が一律で支払うには、1000億円の財源が必要と言われる。これでは小生が歯科医師会の会長であっても反対に回るかもしれない。
それではどうすれば良いのか。その答えは簡単明瞭で、歯科医師会と歯科技工士会が手を取り合って、歯科医療費のパイを増やすべく共闘すれば良いのではないだろうか?
今まで蔑ろにされてきた歯科技工士法の身分法の要素をクローズアップさせるのもひとつの方法だろう。昭和30年に歯科技工法が制定されてから39年経った平成6年1月には歯科技工士法に改称され、身分法の要素がより強化されている。
平成22年4月には歯科技工加算が保険に導入された。さらに、歯科技工士の立会や、診療補助、訪問診療分野での活用等々、国民歯科医療にとって望ましい案件がいくつもある。先進技術・材料の新規導入も、CAD/CAMの導入で記憶に新しいだろう。
また、今まで放置されてきた、歯科技工指示書の点数化なども大きなアップに繋がるだろう。その額は、処方箋と同じ額が設定された場合およそ1500億円とも試算される。
もちろんこれらにはいくつものハードルがあるのは容易に想像がつく。
しかし、どう考えても、30年余の歯科技工士会の運動はそろそろ転換しなければならない時期に来ているだろう。
これからも先も数十年間、身内同士で足の引っ張り合いを続けますか?
共闘して、より良い歯科医療環境の未来を築きますか?
(日本歯科新聞投稿原稿より)
会員だより
2018年5月20日 台湾の新聞「自由新報」に
当会世話役の川島哲氏の活動が掲載されました。
(以下訳文)
「歯科技工マスター川島哲来台、Arch dental満員御礼」
金属床の第一人者である川島哲先生が先日長旅を経てarch dentalに「無料」の授業をするために来台した。新社屋のセミナールームは人も通れない程の賑わいとなった。
川島先生は以前歯科技工士は歯科医師の下で働いていたが、技工界の努力により、対等の関係で協力し合えるようになり、患者に対してより良い治療が可能になったと強調した。
今年で70歳を迎えた川島先生は現在も学ぶ事を絶やさず、これまでの著書も多い 。日本歯科技工界の「教科書」的な存在である。川島先生の技工室ではデジタルとの融合はのみならず、CAD/CAM及び3Dプリンター、顕微鏡等を利用し、技術的な向上並びに多くの患者の支持を得ている。
川島先生は1976年に開業、25年後に日本補綴構造設計師協会を発足させた。Arch dental代表のHenryは、日本の歯科技工の技術は高く、台湾の水準も欧米と比べて高い。近年のトレンドであるデジタル化は「デジタル印象、クラウド送信」を基本に、歯科医師の口腔内scanと同時に歯科技工士がデータを受け取れる時差のないコミニュケーションを可能にした。これまでの運送にかかる時間やコスト、また患者の義歯製作にかかる待ち時間を削減し、終了当日に新しい歯が入るのも夢ではない、と指摘する。
また歯科界に踏み入った当初を回顧し、これまで多くの人に助けられて、当時初任給は13000元、 25歳の時母親から30万元の援助を元に開業し、研鑽を続け今のArch
dentalに至る。特に生産と 教育の両立を重視し「後進の育成を徹底する事で、歯科技工界全体のレベルアップにつながる」と語る。
新社屋には今後更に各分野の講師陣を招聘すべく、大きくセミナールームを構え、技術、視野を深めていく。
(2018年5月20日 台湾「自由新報」より)